フォーク・コンサートの企画に携わるようになって、それこそフォーク!フォーク!と言うようになったけれど、自分の生まれが1969年ということもあり、正直世代的に青春時代フォークソングにどっぷりと浸かっていたわけではない。
フォークに限らず、自分の記憶の中にある70年代の音楽といえばテレビから流れる歌謡曲やアニメの主題歌、CMソングくらいだ。
父や母もどちらかというと音楽的なセンスはお世辞にもあるとはいえない方で、五木ひろしなんかが好きな父の車には今となっては懐かしい8トラのカセットから小柳ルミ子の『瀬戸の花嫁』や、村田秀雄なんかがエンドレスで流れていたっけ。でも、そんな音楽的なセンスは自分から見たらほとんど無かった父だが、三島由紀夫が好きだったり文学的な蔵書が結構あるところから察すると、あながち芸術に対する興味がなかったわけではなさそうだ。でもいまいちセンスが…。
そんな父が持っていたLPレコードで今でも印象に残っているのが、小椋佳。
当時幼かった自分が、好きでもない小椋佳の曲に耳を傾けることはなかったけれど、ステレオから流れていた音楽の残像だけは心の奥で焼きついたままで、今でも小椋佳の曲を聴くと、今は何処が好きだったのか問いかけることのできない父のことをふと思い出してしまう。自分が洋・邦問わず70年代の音楽を聴き続けるのも、自分が幼かった頃の父の背中を追いかけようとしているのかもしれません。
作詞が小椋佳(作曲は井上陽水)―白い一日。コンサートで演奏してもらいたい曲のひとつです。